緑内障















緑内障とは

●40歳以上の30人にひとりが緑内障
 緑内障とは、眼圧が高くなるなどによって目の神経に障害が起き、視野が狭くなる病気です。
 加齢にともなって起こりやすくなる病気で、40歳以上の日本人の30人にひとりは緑内障の患者さんだという調査結果があります。つまり日本には、200万人もの緑内障患者さんがいると考えられるのです。しかし実際に治療を受けている人は40万人ほど。症状に気づかないままの人が160万人もいます。
 緑内障は、放置したままだと失明に至ることもあります。
 日本人の中途失明の原因で最も多いのは糖尿病による糖尿病網膜症ですが、第2位は緑内障です。緑内障は誰でもなりうる病気で、しかも最初は症状に気がつきにくく、病気がすすんでしまうこともあるという問題もあります。緑内障がどのような病気かを知り、早期に発見・治療することが大切です。

●目の仕組みと緑内障
 ものを見るということは、ものから反射した光が目に入るところからスタートします。光は、眼球の角膜、前房、瞳孔、水晶体、硝子体を順に通って、網膜に像を結びます。その情報が、網膜の視神経細胞を通って脳に伝えられることで、私たちはものを見ることができるのです。
 この仕組みが正常に働くには、眼球内が一定の圧力、つまり一定の眼圧に保たれていることが必要です。眼圧がいつもほぼ一定なのは、水晶体の周りが房水という液体に満たされて、またその後ろの方が硝子体というゲル状の物質に満たされているからです。
 重要なのは房水が一定量に保たれているということ。その圧力のために眼球が球形に保たれ、ひしゃげることもなく、ものの像が結ばれて、ものを見ることができるのです。
 房水は血液の血漿とよく似た成分の透明な液体で、血液の代わりに目の中にあって、水晶体や角膜に栄養を与えています。房水は毛様体で作り出され、水晶体の周りを流れ、隅角を経て、血管へと流れ出ています。つまり房水が常に一定量流れていることで、ある程度の眼圧が保たれているのです。
 ところが、房水の流れが悪くなったり、流れ出なくなったりすると、房水が眼球内にたまって眼圧が高くなり、周りを圧迫し、硝子体も、その先の網膜も圧迫されてしまいます。
 眼圧が高くなると、圧力に弱い視神経がおかされ、消失してしまい、そのため視野障害が起こります。これが緑内障です。
 視神経は一部でも消失すると、その分だけ視野が欠けてしまいます。しかも消失した視神経は二度と元には戻りません。それだけに緑内障は、早期発見、早期治療が大切です。現在では緑内障が早期に発見されれば、そこで進行を止め、失明に至らずにすむようになってきました。
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緑内障の種類

●だれにでも可能性のある原発緑内障
 緑内障には、大きく分けて3つのタイプがあります。
 ほかに原因となる病気がない場合の「原発緑内障」、けがや何らかの病気、薬剤の使用などが原因で起こる「続発緑内障」、生まれつき隅角の異常があるなどの「先天緑内障」の3つです。
 このうち、だれにも起きる可能性があり、実際に患者さんが多いのは「原発緑内障」です。そして、原発緑内障はさらに「開放隅角緑内障」と「閉塞隅角緑内障」とに分けられますが、緑内障の中でも最も頻度が高いのは原発性の開放隅角緑内障です。そこで一般に「緑内障」というときには、原発性の開放隅角緑内障をさすことが多いといえます。

●開放隅角緑内障とは
 隅角の、房水の排出路にはフィルター状の部分があります。このフィルター部分にさまざまな物質がたまって目詰まりしてしまうと、房水の排出がうまくできなくなります。なぜフィルター部分が目詰まりしてしまうのか、原因ははっきりしていませんが、老化現象のひとつであることは間違いないだろうといわれています。
 いずれにしても房水の排出がうまくいかないと、房水がたまり、眼圧が上がってしまいます。そしてやがては視神経をおかして消失させ、視野障害が起こります。これが開放隅角緑内障です。
 開放隅角緑内障は非常にゆっくり進行し、また自覚症状が現われにくいために気づきにくいといえます。

●眼圧が正常範囲内の緑内障もある
 眼圧の正常範囲は10〜20mmHgです。そして21mmHg以上の高い眼圧のときには、それだけ緑内障の発生率は高くなるといえます。しかし、眼圧が高い人すべてが緑内障になるというわけではありません。逆に、眼圧が正常範囲内なのに視神経の消失や視野障害が起きている、正常眼圧緑内障もあります。眼圧がいくつだと緑内障という、数値の目安はないのです。
 なぜ正常眼圧で緑内障になるのかについては、次のように考えられます。まず、視神経の強さには個人差があること。もともと視神経の弱い人の場合、正常眼圧の範囲内でも視神経がおかされることになります。
 実は日本人には正常眼圧緑内障がとても多く、開放隅角緑内障の4分の3は正常眼圧緑内障だということがわかっています。

●閉塞隅角緑内障とは
 開放隅角緑内障が房水の排出路の問題で起こるのに対して、房水の通り道の問題で起こるのが閉塞隅角緑内障です。
 毛様体で作り出された房水は、水晶体の後ろから瞳孔の方へと流れています。その通り道である水晶体と虹彩とがくっついて「瞳孔ブロック」を起こすと、房水がそこでせき止められてしまうのです。すると、隅角の房水の排出路も虹彩で塞がれてしまい、房水がたまって眼圧が上がり、閉塞隅角緑内障になります。
 瞳孔ブロックが広い範囲で起きると、短時間で隅角が閉塞し、急激に眼圧が上がって、急性の閉塞隅角緑内障発作が起こります。この場合には、急激な強い目の痛みやその他の症状が現れます。しかし、隅角の閉塞が起こっては戻り、起こっては戻るということを繰り返す慢性の閉塞隅角緑内障もあって、その場合は開放隅角緑内障同様、症状に気づきにくいといえます。
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緑内障の症状

●初期の自覚症状はほとんどない

 正常眼圧緑内障を含む開放隅角緑内障や、慢性の閉塞隅角緑内障では視神経が徐々におかされて視野障害が起こりますが、初期の自覚症状はほとんどありません。
 視神経は視神経乳頭というところから束になって脳へとつながっています。眼圧が高くなり視神経がおかされると、視神経の線維は徐々に消失し、視神経乳頭がへこんでしまいます。こうなると神経繊維が消失した部分の情報は脳に伝わらなくなり、視野が欠けるという障害が起こります。
 この変化はとてもゆっくりと起こっています。そして、神経線維は120万〜130万本もあるので、神経線維が消失し始めてもすぐには視野に影響が現れません。通常、視野の異常が発見されるときは、神経線維の半分ほどが消失している段階です。
 さらに、私たちはものを見るとき、片方の目の視野が欠けていても、もう一方の目で自然にカバーしてしまい、視野が欠けているとは思わずに、日常生活にも支障のないまま過ごしてしまうことが多いです。
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緑内障の比較的初期の自覚症状

●パソコンのマウスを動かしたときに、ディスプレイの←(矢印)が見えなくなった

●時刻表を見た時に、時間を追うのが難しかった

●新聞や文庫本などの細かな活字を追うときに違和感がある

●急性の閉塞隅角緑内障の発作は
 緑内障でもすぐに気づく場合もあります。
 急性の閉塞隅角緑内障が起きたときで、突然の強い目の痛みに襲われ、目の充血・かすみなどとともに、強い頭痛や嘔吐までもが起きることがあるのです。こうした症状が起きたときには直ちに診療を受けることが必要です。
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緑内障を早期に発見するには

●予防策は定期的な検診
 開放隅角緑内障や慢性の閉塞隅角緑内障は、とてもゆっくり進行します。発病から末期症状までは、通常30年前後もかかるのです。それだけに早期に発見すれば、病気の進行を抑え、失明を防ぐことができます。
 早期発見のためにできることは、定期的な検査を受けること。それも眼圧検査だけでなく、眼底検査と視野検査が必要です。
 緑内障の検査というと、眼圧検査を受ければいいと思われがちです。
しかし、健康診断で眼圧検査だけを受け、正常眼圧範囲を超す21mmHg以上のときだけ精密検査を受けるという方法では、日本人にいちばん多い正常眼圧緑内障を見逃すことになってしまいます。
 眼圧・眼底検査を眼科施設で受け、必要に応じて視野検査を受けることが緑内障を早期に発見する唯一の方法です。
 40歳以上の人は、できれば年に1回少なくとも3年に1回の検査は必ず受けたいものです。

●眼圧検査
 眼圧を眼圧計で測定します。眼圧計には、角膜に圧搾空気を吹き付けて測るタイプと角膜に直接測定器を当てるタイプとがあります。
 角膜に直接測定器を当てるタイプのほうが正確に測ることができますが、空気を吹き付けるタイプでも十分測定することができます。空気吹き付けタイプは、一瞬空気が当たるだけなのでほとんど違和感もありません。角膜を直接測定するタイプも、事前に表面麻酔薬を点眼するので痛みはありません。

●眼底検査
 網膜にある神経細胞の突起が集まって作っている視神経乳頭にへこみができていないかどうかを観察する検査で、検査方法は次の3つのいずれかがとられます。
 1つは、検眼鏡や生体顕微鏡で眼底(眼球のいちばん奥)を見て、視神経の状態を調べる方法。
 2つめは眼底カメラで眼底を見て、視神経の状態を調べ、カラー写真に撮って記録する方法。
 3つめは画像解析装置を用いて、視神経や網膜の精密なデータをとり、管理する方法です。いずれも短時間で苦痛もなく受けることができます。

●視野検査
 緑内障の確定診断のために必要な検査で、光の見え方によって視野が欠けていないかどうか調べる検査です。
 動く光の見え方で視野を測る「動的視野検査」と、動かない光の見え方で視野を測る「静的視野検査」とがありますが、最近はコンピュータ制御で迅速に、正確に視野を測ることができる静的視野検査が増えています。
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緑内障の治療

●まずは薬物療法で眼圧を下げる
 緑内障の治療の目的は、病気がそれ以上すすまないようにすることです。つまり、より早く発見して、より早く治療を始めるほど、長く、よい状態を保つことができるわけです。
 早期発見と適切な治療こそが、緑内障での失明を防ぐ決め手です。
 どのタイプの緑内障でも、治療で大切なのは眼圧を下げることです。そのためにまずは、薬による治療を受けます。現在では、房水の産生を抑制する薬や房水の排水を促す薬などが、それぞれ多種類開発されています。
 効き目がないときにはほかの薬に替えたり、いくつかの薬を組み合わせたりといった使い方で、とても高い効果が得られます。目薬や飲み薬が中心ですが、急いで眼圧を下げなければならあないときに注射薬も使われることがあります。

●レーザー治療
 薬物療法だけで十分に眼圧を下げることができない場合には、レーザー治療が検討されます。
 開放隅角緑内障では、目詰まりを起こしている隅角のフィルター部分にレーザーを照射して、目詰まりを解消し、房水の排出をよくしようという方法がとられます。開放隅角緑内障ではレーザー治療が成功しても、しばらくするとまた目詰まりが起こるということがあります。かつてはレーザーの照射によって隅角の組織そのものにも障害を与えてしまい、そのために、繰り返してのレーザー治療はできませんでした。現在では新しいレーザーが開発され、繰り返しての治療が行えるようになっています。
 閉塞隅角緑内障では、虹彩にレーザーを照射し、ごく小さな孔を開けて房水が通るようにします。この場合には、繰り返すことなく1回の治療で順調に推移することが多いといえます。

●外科的治療
 レーザー治療が難しいケースなどのときには外科的治療、すなわち手術をすることがあります。手術によって隅角に新しい房水の排出路を作ろうというもので、これもやはり眼圧を下げるために行われるものです。
 最近は、眼圧をただ下げるだけではなく、その患者さんに適した眼圧が保てるように、手術後の房水の排出量を調整することもできるようになりました。

●ゆったりかまえて、病気の進行を食い止める
 一度消失した視神経は元に戻ることはありません。つまり緑内障は完治するということはないわけです。しかし、近年は治療薬の開発や治療技術の発達によって、進行を食い止めることができるようになりました。
早期発見、早期治療。そして主治医の指示に従って経過を見守れば、日常生活に支障をきたすことなく、生涯を過ごすことができます。
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緑内障Q&A


Q
最近、緑内障の話題をよく耳にします。緑内障にかかる人は増えているのですか?

A
病気の発生率が増えているということではなく、平均寿命がのびて、高齢の方が増えていることで緑内障がクローズアップされてきたのです。以前なら緑内障の視覚障害に気づく前に亡くなっていたほどの高齢の方が、今ではお元気です。そこで進行した緑内障に気づくということもあるわけです。もうひとつ、緑内障について一般の方の関心が高くなり、検査を積極的に受けるようになってきたので、自覚症状の無い、早い時期の患者さんも見つかるようになったということもあります。
Q
緑内障を根本的に治す方法はないとか。それなら検査や治療を受けたくはないのですが。

A
緑内障は放置すれば失明にいたる恐ろしい病気です。しかし検査を受けて早期に発見され、治療を受けることができれば、その段階で病気の進行が止まり、失明を防ぐことができます。緑内障の早期発見、早期治療は、高齢社会でクオリティ・オブ・ライフを高く保つために不可欠なことです。
Q
緑内障になりやすい人は、どんな人ですか?

A
正常眼圧緑内障を含む開放隅角緑内障は、男女比では女性のほうが多いといえます。そして発病には関係ありませんが、近視の人が緑内障になったときには、そうでない人より進行が早いということもわかっています。また、家族暦も危険因子。家族に緑内障の方がいるときは早めに検査を受けることをおすすめします。
閉塞隅角緑内障の場合は、圧倒的に女性が多く、それも60代以上の高齢の方、そして遠視の方がなりやすいといえます。やはり検査を積極的に受けていただきたいですし、急性の症状が起きたときには直ちに治療を受けましょう。
Q
健康診断で毎年、眼圧検査と片目は眼底カメラの検査も受けています。ほかの検査は必要ありませんか?

A
緑内障の早期発見のためには眼圧検査だけでは不十分です。日本人に多い正常眼圧緑内障を発見するためには、少なくとも眼底検査は欠かせません。そして眼底検査は必ず両眼とも受けるようにします。緑内障は両方の眼に起こる場合が多いのですが、進行の度合いは異なりますので、片方の目の検査だけでは見逃すおそれがあるからです。両眼の検診を受けるようにします。
また、健康診断の内容にもよりますが、一般的な健診の眼底検査は緑内障の発見を目的としないことがほとんどですから、高血圧による網膜の出血などの発見には役立ちますが、視神経の観察には十分ではありません。緑内障発見のためには、眼科医による検診をおすすめします。

Q

緑内障の治療を受けながら、日常生活で注意することは?

A
健康的で無理のない、規則正しい生活を心がけます。何をしなければならない、これをしてはいけない、ということはありません。ただ、過剰に興奮したり、長時間うつむいて仕事をしたりしないこと。えり元のきつい洋服を着たり、大量の水分(1リットルくらい)を一度に飲んだりすると、眼圧が上がることがあるといわれていますので、これらのことを一応の目安にして、あまり神経質にならずに「緑内障とうまくつきあっていく」ことが大切です。
緑内障以外の病気で診療を受けるときには、その医師に緑内障の治療をしていることを伝えてください。緑内障に影響を及ぼさないような治療方法を医師が選択するために必要なことです。
適切な治療を受けながら、できるだけ日常生活をエンジョイするようにしましょう。
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